赤に酔う




「…っは……なのは……目開けて…私を見て」

フェイトちゃんは私と肌を合わせるときに決まってそういう。
口にフェイトちゃんの指を突っ込まれてくぐもった声しかでない。
指で口内を蹂乱されて少し苦しいけど。
それすらも気持ち良いと思えるのはなぜだろう。
目を開けたらフェイトちゃんの顔が歪んで見えた。
ぼやけて歪む視界に、私は自分が泣いているのに気付いた。
気持ちよくて、心地よくて、愛する人に愛されていて。
幸せだった。
幸せすぎて夢かと思うほどに。
フェイトちゃんの赤い瞳が私のぼやけた視界に冴える。

「なのは……なのは……」

うわ言のように呟きながら私の目を見て離さない。
私を愛おしそうに見つめるフェイトちゃんの視線が恥ずかしくて、
目を反らすけど直ぐに頬に手をあてられ戻される。

「ちゃんと見て」

そう言うフェイトちゃんの瞳には明らかな独占欲と情欲の色がごちゃまぜに浮かんでいて。
ただでさえ溶けそうになっていた私をいっそう溶かす。
ちゅぷ、と音をたてて私の口から指が抜かれる。

「ああ……フェイトちゃん…っ」

沸き上がる快楽に堪らなくなって愛する人の名前を呼んだ。

「…なに…なのは…」

律儀に返事をする、大好きな優しい声。
頬に暖かい手が触れたかと思うとキスをされた。
奪うような事前にするような激しいものではなく。
ただ唇同士を重ねる、シンプルなキス。
赤い瞳に視線が絡めとられてついばむような軽いキスでもぞくぞくした。
ちゅ、ちゅ
と微かになる水音もそれに拍車をかけ思わずフェイトちゃんの首に腕を回す。
図らずもそのせいでぐっとフェイトちゃんを引き寄せる形になり、唇の密着度が上がる。

「もっと、欲しい?」

少し唇を離し、視線を合わせたまま問われる。
赤い瞳に見つめられ。
私はその赤に拘束される。
宝石のようなその赤い目は今私だけを見ている。
なんとなく声を出すのもはばかられたので、私は行動で示す。
首に回した腕をぐっと引き寄せ自分のほうに持ってきて口づける。
少しぽかんとしたフェイトちゃんだけどそれも一瞬。

「なのは、かわいい」

そう言われてぎゅっと抱き締められる。
そしてまた視線を絡ませてキス、キス、キス

フェイトちゃんの赤い瞳には私がうつっていて、
多分私の瞳にはフェイトちゃんしかうつっていない。
互いが相手しか見えていない状況。
それに私は酔いしれる。
そして今日もフェイトちゃんの瞳の中で溺れるんだ。




END
 

 

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