あなたのものになればいいのに



「あたしのものになればいいのに」

私を抱き締めている刃友は首筋に顔を埋めたまま小さく呟いた。
それこそ泣いているかのようなか細い声で。

「あたしのものになればいいのに」

だだをこねる子供のようにただただ、その言葉だけを。
私は玲のものにはなれない。
それは私も玲も知っていること。
でもこんな風に求めちゃうのは仕方ないことでしょ?
私だって玲がほしい。

「あたしのものになればいいのに」

どんなに双方が願っても、
どんなに抱き締める力を強くしても、
叶わない現実。
事実、玲の私を抱き締める力は痛いぐらなのに、叶わない。
そんな現実は認めたくなくて、考えたくなくて、
私も思わず力をこめる。

「あたしのものに…なればいい……」

ああ、神様。

抱き合ったまま玲と溶けあわないかしら。
こんなに痛いぐらいにくっついているんだもの。
体の一部が繋がれば、私は玲の体になる。
つまりは玲のものになるでしょう。
馬鹿げた現実味のない事を考えているのはわかっている。
でも願わずにはいられない。
だって、私だって――


……あなたのものになればいいのに



END
 

 

ブラウザバックでお戻りください

inserted by FC2 system