誕生日。
あたしは中学からその日が好きじゃなくなった。
「誕生日おめでとう」って、何がおめでたいの。
あの人と距離がいっこ離れちゃうだけなのに。
11月の終わりにやっと追い付くその人は、
あたしがこんな風に思ってるなんて絶対に知らない。

 

どうせ知らない



桜が咲き誇る木の下。
いつもはキザったらしいセリフと行動する癖して、
なんでそんな風に優しく笑うの。
満開の桜を背景に笑うその人は。

「おめでとう」

なんて言って。
そんな笑顔で言われたら嬉しくなっちゃうじゃん。

「未知がこの日に生まれてきてくれたから、私たちは同じ場所で出会ったんだよ。そういうものなんだ。
遅かったり、早かったりしたら私たちは出会わなかったかもしれないんだから。
…だからおめでとう、そしてこの日に生まれてくれてありがとう」

相変わらずキザったらしいセリフなんてはいちゃって。
それが似合うのもなんだか気にくわない。
でもその一言だけで誕生日がほんの少し好きになる自分も気にくわない。
結局、あとからまた離れちゃうんだって落ち込むから嫌なのに。

きっと、あたしがこんな風に思うなんて、
考えるなんて、
どうせあの人は思いつきもしないんだ。



END
 

 

超絶短編。雉猿はあはあ。

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